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<< 妄想暴走気味のパッチ5.2感想 | main |
なんかまだ書いてる二次創作

またしてもというかパッチ5.2の前に書いて別のところにあげたものです。

こっちで読んでる人がいるのかどうかいまいちつかめていませんが。

9000字程度あります。なんか改行が上手く設定できなくてガタガタしててすみません。

 

だめな人はスルーでよろしく。

 

アーモロートに出てきた幻影のヒュトロダエウスとエメトセルクの話です。
真面目に書いたのですが通じる文章になっているのかどうかいまいち自信がありません。
妄想捏造てんこ盛りで突っ走ってます。

 

 

 

魂を呼ぶ声

 

 

 

---------
行いの中に罪があるならば
行わなければ罪ではないが
思うことが自ずと形を為してしまうのならば
思うことがすでに罪であり
どんなに厳しく行いを制したとしても
人は罪に囚われてしまうであろう

ワタシは影だ。
目醒めさせられたワタシがそう認識するまで、長い時間はかからなかった。見慣れているはずのアーモロートの街並みは時が止まったかのように静かで、何もかもがひっそりとして、そして閉じている。本来存在していたはずの時間から切り離された、はるか遠い未来の時空にこの街は存在していた。

 

そこに造られた時間は完全に静止しているわけではなく、短い時間を繰り返すようにできていた。漂うエーテルはどこにも向かわず、ただ静かに閉じた街の中をめぐり続けるだけだった。

 

 

街をゆく人影はまるで幽霊のように音もなく現れ、ひとくさりの演技を済ませるとまたすうっと消えていく。そして何よりも、全てを創り出しているエーテルの色を見ればわかってしまう。この街はエメトセルクが作り出した幻影だ。そしてヒュトロダエウスの影であるワタシ自身も、そうして創り出された影の役者の一人に過ぎない。

 

そこまで考えて、ふと首を傾げた。

 

役者なら与えられた役割があるはずだ。それは何かを、誰かに見せるために創られているはずだ。目的のない創造など、エメトセルクはしないだろう。しかしどういうわけか、創り出された役者であるはずのワタシには、なすべき役割が見当たらないのだった。

 


 
(エメトセルク、キミはいったい何を…)
思念を送ろうとして、できないことに気がついた。ワタシは影だ。魔法を発動させる力も、誰かに意思疏通をする手段も与えられていない。それが叶わないということは、エメトセルクは少なくともワタシと話したいという意図を持ってワタシを創造したわけではないらしい。

まったく酷いな。
これじゃあワタシがキミにとって余計な存在みたいじゃないか。

 

そうなるとかえって余計なお世話をしてやりたくなるのが人の気持ちというものだ。会いたくもないはずの存在をわざわざ創り出してしまうあたりに、素直になれない彼の本質が出てしまっているように思う。キミ、ワタシが友人で良かったよねと届かない声を心の中で投げかけながら、ワタシは歩き始めた。

 

 

周囲を探っていて、程なくして気が付いた。ワタシたちの良く知っている、懐かしい色をした魂が近づいてきている。懐かしい色ではあるがかつての強い輝きはなく、姿形も能力も違う別の存在として生きているそれは、この街の時間ではなく今の時間を生きている、ワタシたちの知らない誰かなのだろう。ワタシたちの知る存在であった頃の記憶も、おそらく失っているだろう。

 

あの魂を持つものと、ワタシが出会うことをエメトセルクは想定しているのだろうか?

 

わからないが、ワタシはなによりも興味があったから、その魂を持つ者に会ってみようと思った。そこで破綻が生じるなら、ワタシは何もできないか、最悪その場で消えてしまうか。自分の魔法に破綻が生じていると知ったら、エメトセルクは悔しがるだろうか。いずれにせよ結果が見てみたいと思ったワタシは、その魂の行方を追って歩き始めた。

 

その者の動きを追ってたどり着いたのは人民事務局だった。

 

声を掛けると、その人物はワタシの姿を見て驚いていたが、思ったよりも冷静に話を聞いてくれた。何者にも動じないその胆力はさすがあの人の魂を持つ者というべきか。超える力を持っているのも変わらないらしく、あの人によく似た強い目をしていた。
ワタシはこの街に訪れる悲劇とその後に起きた事実をかいつまんで話した。そしてエメトセルクが背負う想いと、あの人の魂について伝えた。あの魂の持ち主がそれをどのように受け止めたかはわからないし、転生を繰り返してまであの人が何を為そうとしているのかもわからないが、あの魂の輝きにはやはり惹きつけられるものがあった。
それは触れられなかった自由への憧憬なのか、届かなかった未来への希望なのか、ワタシたちにはもう確かめるすべもないのだけれど。干渉する力を持たないワタシが会話をなし得たのは、きっとあの人がそれを許してくれたからなのだろう。
分かたれてしまった魂を初めて目にしたときは心を痛めたけれど、どんなに輝きを弱められようと、生きようとする思いの強さは変わらなかった。そんな小さな魂が、今もあの人の魂の美しさを失わずにいることに、ワタシは少し感動を覚えた。

 

エメトセルク、優しいキミはきっと、この命をどうにかして完全な形に戻してやりたいと思っているのだろうね。

 

そう、でもそれを、彼らは望まない。かつての時代のワタシたちにとってのあるべき姿は、彼らの望む姿とは違うということだよね。ワタシたちは失ったものに執着してしまうけれど、彼らにとって初めからないものは、ないままに生きていくしかないものだものね。どんな理想であろうと、あるべき姿を押し付けることは、やはり傲慢なのだろうね。

 

ああでも、キミが直接あの人の魂を呼び戻そうとはしなかったのは、きっとそういうことなのだろうね。
今を生きる魂に、過去の影を追い求めることは無意味だとわかっていたのだろうね。

 

でも、だったら尚更なぜ、こんな街を…?

 

エメトセルク…。
駄目だな。やっぱり直接話したくなってしまう。

 

彼がどこにいるのかはもう分かっているし、あの人の魂を持つ者と対峙しようとしているのであれば、あまり時間の猶予はないのだろう。ワタシはエメトセルクの元へと向かった。

 


アーモロートの中心街にある一際大きな建物、カピトル議事堂に彼はいた。
「エメトセルク」
思い切って呼びかけてみる。果たして声は届くのだろうか。
固唾を飲んで見守るワタシの前で、エメトセルクはゆっくりとこちらを振り返った。
小さな身体で俯いている彼の視線は随分と下の方にあって、顔をあげる気にもならなかったのか、彼はワタシを一瞥すらすることなく、盛大な溜め息をついた。そしてパチンと指が鳴らされる。消去の魔法だ。せっかく会いに来たのにいきなり消し去ろうとするなんて、酷い歓迎じゃないか。
消されてなるものかとワタシは最後の抵抗を試みた。かけられた魔法を防ぐための障壁のイデア。概念の想起も具現化するための方法論も頭の中にはある。本来のワタシであれば造作もなく成功するはずの魔法だ。だがワタシがただの幻としてしか存在を定義されていないのであれば、思念を伝えようとしたときと同じく何も為せないかもしれない。だからこれは一つの賭けだ。それでも黙って消されるよりは、抵抗の意思くらいは示しておきたい。それが彼の心に何がしかの波紋を投げかけるかもしれない。

結果的に彼の消去の魔法は成功しなかった。ワタシの意思が打ち勝ったと言えば聞こえは良いのだろうが、創られた幻影であるはずのワタシが創造主の意に反した行動をしたということ自体が、彼の理論の外だったようだ。彼は自らが作り出した幻影のワタシを消そうとしたが、当のワタシの行動は彼が想定していた幻影の範疇を超えていたから、魔法が通じなかったということのようだ。
全く、本当に恐れ入るよ。

想定外の創造物を生み出したという意味では、これもある種の失敗なのかな。意図的でなかったとは言え、創造主の意を離れ、自ら行動する意思を持つものを作ってしまうなんて、それはまるで“魂”そのものみたいじゃないか。
そんなものを作ってしまったら、キミはいよいよ人でいられなくなってしまうよね。今回ばかりは彼がワタシの能力を見誤ってくれていたことに感謝するとしよう。

「やれやれ、厄介なものを作ってしまったようだ」
また一つ盛大なため息をついて、呆れたような、それでいて何かを懐かしむような、少しやつれた表情で彼はワタシを見た。
「幻が私に何の用だ?」
「それはこっちのセリフだよ。わざわざワタシを作り出しておいて、何もせずに放っておくなんて冷たいじゃないか」
「話すことなど、何もない」
俯いて視線を外したかと思うと、エメトセルクはくるりと背を向けた。その小さな背中はあまりにも頼りなくて、かつての姿を知る者としては憐れみさえ感じてしまう。
「…キミはずいぶんと小さくなってしまったんだね」
身を屈めて、その小さな背中を見下ろす。
その内に秘めた膨大な魔力を思えば、その身体は器としてはあまりにも小さく不自由なことこの上ないだろうに。
「ハ!これでもなりそこないの中では大きな部類なんだ。魔法を扱うには効率が良いとは言えないがな」
反論にもなっていないような反論を、背を向けたままでエメトセルクは口にした。どこか頑なで、意地っ張りなその話し方に思わず口元が緩む。強がり、というのかな、そういうところは変わっていないんだね。
「随分と変わった衣装だね」
煌びやかな衣装の胸や肩にいくつも重ねられた勲章。贅を凝らした精巧な装飾、丁寧織り込まれた刺繍、沢山の生き物を犠牲に作られた毛皮と皮革。ワタシたちの時代にはきっと忌避されたであろう権威と強欲の象徴のような華美な服装。
どうしてそんなものを纏っているのかと首をかしげるワタシに、エメトセルクは静かに答えた。
「私たちの仮面と同じだ。立場を表し、実体を隠す」
「隠す?・・・アシエンとしての自分を?」
そう口にしたとき、エメトセルクはふっと小さく笑った。次の瞬間、バチンと彼の指が鳴ってワタシの身体は作り替えられていた。

小さな器に押し込められた僅かばかりのエーテルと限定された魔力、あまりにも薄く弱い魂の輝き。それは彼が”なりそこない”と呼ぶ脆い命の器だった。

そこにいくつかの記憶の断片が情報として流し込まれる。耐えがたい感覚に、たまらず呻き声が漏れた。それはエメトセルクが見てきた、分かたれた魂たちの人生の記憶だった。小さな器に過剰な情報を一気に与えられ、入ってくる情報をただ読み取るだけで精一杯だ。こんなにもひどい感覚があるものだろうか、と思う。短い人生の記憶の断片から、押し寄せる感情の一つ一つがまるで嵐のように、激しい情動でなけなしの脳細胞を焼き尽くしていく。
怒り、憎しみ、哀しみ、愛情、嫉妬、羨望、孤独…。人として当たり前の一つ一つの感情は、知っているはずのものだったけれど、僅か100年にも満たない短い一生の中に色濃く刻まれたその想いの一つ一つは、満たされることのないまま無力な自分への絶望と迫りくる死への恐怖に圧し潰されていく。あまりにも小さく無力なその命と、持て余すほどの激しい感情の嵐。
襲いくる感覚のあまりの重さに足がふらつく。その気配の変化を感じ取ったのか、エメトセルクが振り返った。
「どうだ?まさに地獄だろう?」
ようやく視線の高さが揃う。苦悶の表情を浮かべるワタシに、エメトセルクは笑っていた。こんな身体では生きていても監獄にいるようなものだ。魔法による創造はおろか、エーテルの操作も知識の探求も研鑽の成果を分かち合うあの無上の喜びも、全て奪われ切り離されて、虚無の絶望が大きく口を開けて待つ扉の前で震えながら死を待つしかない。

「キミはなぜ、こんな...」
こんな小さな...そう言いかけて、言葉を飲み込んだ。ぶつかった彼の視線が、今までにない鋭さで私を見据えていたからだ。どこか追い詰められたような視線の中に感じたのは、やり場のない怒りだったように思う。彼が”なりそこない”と称している存在に対して抱いた、ある種の蔑みの感情に対して彼は怒っているようだった。

小さくはない、その器の中に閉じ込められた想いは、決して小さくはない。心がそう叫ぶのだ。どれほど弱くとも、その限られた命の力で、幸福を願い、生きたいと願う想いは、決して小さくはない。それは比べられるものではない。

小さくはない心を持ちながら愚かで脆いその小さな命は、どんなに求めても幸福で心が満たされることはなく、どれほど切望しようとその手はこの世の真理に届かない、完全さを奪われ、不足の中に閉じ込められた命の嘆き。永遠に満たされず終わりのない欲の朔望。この小さな身体から溢れ出す感情は、孤独も羨望も愛情すらも、その終わりのない不足から生み出される激情なのだ。

知らなかった。
ワタシたちは全てを手にしていたが故に知らなかった。
一時の感情など永遠の時の中に溶かしてしまえる。だからこれほどの渇望が、時が有限であるという焦りが、力なきその身を苛むものだとは知らなかった。

「絶望も孤独も、その身には余る。こんな小さな命に、任せられない。お前もそう思うだろう?」
限りある命の絶望は、あまりにも深い。そしてそれは幾度となく繰り返され、その存在を知る者の心の中に、ただ喪失の哀しみだけを積み重ねてきた。永劫に近い時の中で果てなき絶望を幾度も味わってきたキミの哀しみは、一体どれほどのものであっただろう?

「キミはなぜ、その身体のままでいるんだい?」
身をもって知らされた事実に打ちのめされながら、ようやく訊きたかった言葉を口にする。エメトセルクは静かに、落ち着いた口調で答えた。
「忘れないためさ」
その命の重さを忘れてはならない、と思うから。あまりに小さく軽いその命を、同じ重さで忘れずにいるために、その身体を使い続けている。
「相手にそれを望むのならば、同じことをこちらもできないと不公平だろう?あのなりそこないどもに、私たちの事が理解できるとは思えないがな!」
僅かに口調を荒げ、語気を強めて言う。それは虚勢を張りたいときのエメトセルクの癖だ。
「キミは、そんな小さな身体で全てを背負おうというのかい?」
ワタシがそう言うと、ふっと自嘲するようにエメトセルクは笑った。
「私は、なりそこないだからな」
敢えて、彼はそう言っているのだ。自ら偽りの道化を演じてまで、私たちは同じなのだと。
脆弱な器に虚弱な魂。だがそれに不釣り合いなほど、厚かましく振る舞う。愚かな、なりそこない。だからこそ。

エメトセルクの目が遠く虚空を見つめる。彼の心を支配し続ける、あの終末の日の光景。

背負いきれないことなどわかっているのだ。
死者の願いを背負おうなんて、思ってはいけない。冥界の力に触れたとき、そう約束させられた。

想いは、その人自身のものだ。他者が勝手に背負ってはいけない。貴方の重荷になることを、相手は望んでいないかもしれない。想いを背負って生きることを願うのは、背負いたいと願う者の我儘でしかない。先人にそう諭された。

それでも、願わずにはいられなかった。
あの、絶望の日。
愛し守ろうとしていたものが次々と失われ壊れていったあの日。

失いたくなかった。せめてその想いだけでも、残して欲しいと思った。救えなかった人々の願いを、背負いたいと思った。救えなかったものを、それでも救いたいと思った。

それら全てを背負うことなんてできはしないのに。
気がつくと亡くなった人たちの仮面を集めて回っていた。焼け焦げ、ひび割れ、血に染まったいくつもの命の名残。
守りたかった。
どうして救えなかった。
己への怒りと悔恨が胸を焼く。
「私は、この想いを手離すことはできない」
目を伏せ、唇を噛み締めながら掠れた声で言葉を吐き出す。胸に添えられた手が震えていた。己の心臓を握り潰そうとするかのように、指先に力が篭る。焼け付くような想いだけが彼を支配していた。


「エメトセルク、顔を上げてくれないか」
せめてその背負ったものの一部分でも、分けてくれればいいのにと思う。エメトセルクは首を振った。
「私の選んだ道だ」
「そっか…。キミは本当に意地っ張りだね。役割の一つくらい、与えてくれたらいいのに」
「勝手なことを言う幻だな」
そこではじめてエメトセルクは笑った。仕方ないなと半ば呆れたような、けれどどこか寂しさを滲ませた顔で。仮面をしていたらこんな細かな表情は分からなかっただろうと思うと、仮面をしていないことが有難く思えた。
「ああ、やっと笑ったね」
嬉しくなってワタシは思わず手を伸ばした。
影の身で触れることなど叶わないとわかっていたが、そうせずにはいられなかった。輪郭をなぞるように、半透明の指が頬を撫でていく。
(触れられたらよかったのに…)
そう願った瞬間、勝手に溢れ出した想いが形を作っていく。指先が光に包まれ、爪と皮膚が再生され、その下に脈打つ血管が張り巡らされその隣を神経が走り、しなやかな筋肉とそれを支える骨が形作られて、みるみるうちに”ヒュトロダエウスの肉体”が創られていく。幻のはずの眼から、一つの雫が落ちる。
「お前、泣いているのか」
言われて初めて気がついた。今まで縁遠いと思っていた感情の波が押し寄せて来て、勝手に涙が出てくる。いやだとは思うけれど、考えるよりも先に、想いが形を成してしまう。こんなにも感情が溢れ出してしまうのは、キミがさっきワタシを“なりそこない”に変えてしまったからだよね。
「キミがいつまでも泣かないから、代わりに泣いているんだよ」
感情を制御できないなんて認めたくなくて、理由をエメトセルクに押し付ける。全てはキミが選んだことなのに、キミの助けになれなくて悲しいなんて、こんな未練がましい感情は、善き市民にはきっとふさわしくない。

「今のワタシは、キミの想いが作り出した幻だから…」
ヒュトロダエウスが静かに微笑む。だがそれは、もう幻ではなかった。伸ばされた手が、エメトセルクの頬に確かに触れる。
「私を惑わせに来たのか?」
「そうじゃない。キミに会いたい、これはワタシの願いだ」
願いの力が、存在しないはずの肉体を創り出した。エメトセルクの願いが、意図せずワタシの“魂”を創り出してしまったように。ありえないはずのものさえ、人の想いは創り出してしまう。

そのことに気が付いて、ワタシはようやく理解した。
創造魔法は、過ぎた力だったのだと。

その力は世界を創ることもできるけれど、いつかそれを壊す力にもなる。人の心が創り出す力は、あまりにも大きい。
愛する心はきっとそれに等しいだけの憎しみを産むだろう。なぜなら人の世界はいつまでも不完全で、永劫に満たされない苦しみの中にあるのだから。それを赦す寛容さも、それを容認しない傲慢さも、人の心は形にしてしまうだろう。分かたれていないはずの一人の人間の心ですら、相反する想いをその心のうちに抱いてしまうのだから。

だから人の心はいつも相克のうちにあり、世界は争いに満ちている。永遠の充足の中にある神の秩序は、人の心を満たすことはできない。限られた命の中の、朽ちゆくその身を焦がし苛む渇望の全てが、その生きた証だ。苦しみ希う、その喘ぎこそが命の光だ。

想いを形にする力は、本当は、魔法なんかではない。
人の手で、人の言葉で、神の奇跡に拠らず人の力で紡がれる世界こそが、魔法のように美しいのだ。

そのことに思い至った時、なぜだろうか、また一つ涙が溢れた。


「役目が欲しいというなら、待っていてくれ。全てが終わった時に、お前に会えるように」
エメトセルクは静かに、落ち着いた微笑を浮かべながら言った。彼はただ、確かめたいのだろう。あの人の魂を持つものが、どんな未来を選ぶのかを。
「フフフ、そんなこと、頼まれるまでもないよ。ワタシはずっと、キミを待っている…」
そこまで言うと、唐突に、そして急速に役目を終えたとばかりにワタシの身体を構成していたエーテルが解けていった。もはや抵抗のしようもない、ワタシにできるのはただ、今まさに消されゆく感覚の中で、いまここにある想いを抱き続けることだけだった。


エーテル視の能力を持つエメトセルクの瞳の中で、ヒュトロダエウスの魂であったはずのものが輪郭を失い、すうっと静かに消えていく。

つかの間の幻惑。それは過去の影であり、願望が見せた夢であり、祈りの力が作り出したささやかな幻だった。

(誰よりも愛おしいキミの魂を、キミの魂にふさわしい場所で、ずっと・・・)

遠く遠く、悠久の時を超えて寄り添うもう一つの世界との狭間で、その魂が残した想いはいつまでもいつまでも木霊していた。


 
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うーん。通じているのだろうか…。
通じる日本語になっているのかどうか非常に不安であります。
なんかご都合解釈で勝手に突っ走っている感じですみません。
ラストシーンのエメがソルの身体のままなのがずっと気になっていて、つまり彼は自分がなりそこないだと自認しているのではないかという気がして。
エメはなりそこないを憎みながらも愛しているけれど、それ自体が古代人への裏切りでもあるので自分を許せないでいるし、エリちゃんに突っ込まれたときはラハブレアの二の舞にならないためだなんて言い訳してたりするけど。
私の中ではヒュはエメの最大の理解者なので、ヒュにわかって欲しいという気持ちがあの幻影のヒュを作ったんだと思うし、あの幻影のヒュが勝手な行動しちゃうのはヒュ自身の想いが何かしら混ざりこんだからじゃないかと思うんですよ。
あとね、古代人は感情の扱いが全般的に薄いというか、苦手というか。創造魔法を操る関係上、彼らは感情を抑えて生きていただろうし、感情にこだわる必要もなかった気がするんですよ。だから感情の理解については鈍いんじゃないかなと。特にネガティブな感情についてはほとんど知らなかったんじゃないかなと。だからこそ終末の恐怖に駆られて大混乱した。
だから日頃から感情に振り回されてウワーッてなるのはなりそこないの特徴で、その分感情の理解も表現もなりそこないのほうが豊かなんじゃないかなと。エメはなりそこないとして生きることでそれを知ったんじゃないかなと。
エリちゃんはエメが「誰の側にもいない」ことを感づいてはいたけど、理解しかねるという様子でしたし、それを“孤独”という言葉で言及したのはアルバートですからね。寂しがりと評したのはシュトラさんですし。
うんまぁ色々書ききれてる気はしないけど、5.2が来る前に書けてよかったかな。
さて墓に入る準備をしよう…。
| FF14 | 23:12 | comments(0) | - | pookmark