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短い二次創作と極ハー感想など

別のところであげたものなのですが、こっちで読んでる人もいるかもしれないと思って一応載せてみる。

 

古代のハーデスとヒュトロさんとリュートのイデアの話。

なんということはない話なので短いです。約2000字+あとがき800字

 

 

 


懐かしき音

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その日の夕方、アーモロートの街を歩いていたエメトセルクの耳に、聞いたことのない楽器の音が飛び込んできた。

見知らぬ家の中から微かに漏れ聞こえるその音は穏やかで不思議と心地よく、仕事に疲れた心を癒し和ませてくれた。


その翌日、同じ音を創造物管理局で聞くことになる。

「ああ、じゃあキミはこのイデアの創造主が原物(オリジナル)を弾いているところを聴いたんだね」

言いながらヒュトロダエウスはいくつかの弦を調整する螺子を操作し、指で爪弾いてはその音色を確かめていた。

「素敵なイデアだ。早速登録しよう」

ヒュトロダエウスは心底嬉しそうに満面の笑みを浮かべてそう言った。リュートと名付けられたその楽器は木で作られた胴に四本の弦を張り、弦を弾いて演奏するものだった。内部で反響して柔らかく弾む音色がとても美しく、並んだ弦を続けて弾くとポロロン...と波のようにいくつもの音の波紋が広がっていく。穏やかな木漏れ日のような不思議な暖かみを感じさせる音色だった。

「器用なんだな 」

操作しているヒュトロダエウスの手つきを見ながらエメトセルクがつぶやく。エメトセルクは魔法技術に長けてはいるが、こうした楽器を再現するのはあまり得意ではなかった。基本的な構造を作ることはできても、素材の一つ一つが持ち合わせる味わいや実際に組み合わされたそれが紡ぎ出す音のイメージをそこまで詳細に思い描くことが出来ないからだ。職人と呼ばれる人々はイデアを元に創造物を作り上げるけれど、出来上がる創造物は一つとして同一ではないし、その一つ一つに更に丹念に手を加えて完成させるのだという。

「キミは抽象的な概念の方が得意だからね。攻撃魔法の鋭さなんか他に類を見ないくらいだよ。それに、この場合ワタシは原物を見せてもらっているから、その分イメージがしやすいというだけじゃないかな。ここでやっているのはイデアの構成要素に不足がないかの検証みたいなものだからね」

そう言ってまたいくつかの弦をかき鳴らし、満足そうに頷くとエメトセルクの方に差し出して見せる。

「キミも弾いてみたらいいんじゃないかい?基本的なことならワタシが教えてあげるよ」

その笑みに何か含むものを感じてエメトセルクは手を引っ込めた。

「お前に教わるとろくなことがないんだ」

ヒュトロダエウスはまたいつものようにフフフと意味ありげに笑った。

「キミに知ってもらいたいことは、他にも沢山あるけどねぇ…」

言いながらイデア登録の承認書類にサインをし、隣の受付へと転送する。それからふと思い出したように顔を上げて言った。

「そう言えば以前にキミが作った録音装置のイデア、あれはすごく好評だよ。皆とても喜んでくれている」

「あぁ...」

言われてエメトセルクは思い出す。それは少しばかり前、素晴らしい演奏を聴いた時に何気なく思いついたイデアだった。この場の空気ごと、この音を残しておけたらいいのにと思ったその願望がそのまま形になったようなイデアだ。

本来その場限りにしか存在しないものを残したいという願望そのものが、あまりにも強欲なように思えて、そしてそれは本来その場にあったはずのかけがえのない価値までも損なってしまうような気さえして、エメトセルク自身はそれを公表することを躊躇していた。しかし実際に思い入れのある音を手元に留め置きたいと願っていた人は多く、公表されるとたちまち広まっていったのである。演奏者たちもそのように残しておきたいと思ってもらえること自体が光栄だと喜んでいた。

「キミはもう少し、自分の気持ちに素直になってもいいと思うんだよ?」

一つの楽器のイデアから職人が作り出す楽器が一つとして同じでないように、音は誰かの耳に届くその瞬間ごとに新たな意味を持つものになる。音をそのままに録音する装置があったとして、生演奏の価値が損なわれるわけではないし、録音されたものがたとえ劣化していたとしても、時と場所を変えて再生されることにはまた新たな意味が生まれているはずだ。人が何かを思い、それを伝えようとすることは、たとえ全てが正しく伝わっていなかったとしても、意味はあるのだ。

「余計なお世話だ」

長居をするとまた何かつつかれそうな気がして、エメトセルクはその日の用件だけを伝えると足早に部屋を出て行った。



その日の帰り道、また同じ場所で例の楽器の音が聞こえてきた。優しく穏やかな旋律が静かな微風の中に溶け込むように消えていく。立ち止まって見上げると音がする方角の窓からは暖かなオレンジの光が漏れていて、流れていた旋律が止んだ後には拍手と共に賑やかに談笑する声が聞こえてきた。

あのイデアの創造者の願いはきっと誰かに届いているのだろう。街の空気は今日も穏やかで、人々は慎ましやかに誰かの幸福を願いながら生きている。再び歩き出したエメトセルクの頬は自然と緩んでいた。





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今の鏡像世界にあるものは全て古代にイデアとしてあったのではないかと思うので、ミーン工芸館のクエやりながら、リュートのイデアもあっただろうと思ったし、きっと古代人は誰かの幸せの為に行動することを至上の喜びとするような心豊かな人達であったのだろうと思う。だからこそエメは何を見ても古代を思い出して比べてしまって苦しむのだろうなと。

本当に悪意のない世界だったのか、エメの記憶が理想化されてるだけなのかはわからないけど、エメの心の中に生きていた人達は本当に善き人々だったのだと思うし、そういう人達が滅びの運命を受け入れなきゃいけない理由なんてどこにもないと思う。

ハーデスがなぜその同胞をヒカセンの敵としてあの闘いに呼び出したのか少し疑問に思ってはいたのだけれど、善き人々であることを捨ててでも生きていて欲しかったというのが彼の願いなのかもしれない。

結局のところ極ハーデス戦で伝えたかった想いというのは、
辛い悔しい哀しい納得できない、という、
ただただその気持ちだけだったんだよな、と
あの終盤の容赦のないクアドラストライクの殴りっぷりを見て思いました。あれは回避できない攻撃、つまりヒカセンはあれをそのまま受け止め耐えるしかないわけですから、納得できないという思いにはヒカセンも同意しているのだと思います。あの攻撃はノーマルにはないからヒカセンの脳内イメージが作り出した攻撃、つまりヒカセン自身の気持ちでもある、と。

あれだけの感情を抱えて一万二千年も生きたエメにこれ以上寂しい思いをさせてはいけない。共存の道はないと星の意思が言ったとしても、彼は敵ではない。彼はただ自分の愛した世界を守りたかっただけだ。

本編の時も思ったけど極ハーデスでもやっぱりそう思いました。


結局エメの幸せは古代にしかないし、ヒカセンは彼を救えてないし、哀しくて辛くてどうしようもないんですけどね。ノーマルの時の光と闇の相克の要素を抜きにして、ただただこの感情に耐えろというのが極ハーデス。つらい。
| FF14 | 21:33 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark









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