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エメトセルクのその後を考えてみた捏造二次創作
しつこいようですがまた書いてしまいました。
勝手な願望と妄想解釈を込めまくったラストバトル後の捏造話。
冥界に還ったエメトセルクとヒュトロダエウスが話してます。それだけの内容です。下心は加えてませんがまぁ私が書くものなので、なんか気持ち悪さがあったらすみませぬ。

約4000字。短いです。


冥き川のほとりにて
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真なる世界と同胞を取り戻すため、一万年以上もの時を超えて生きてきたアシエン・エメトセルクは、同じくこの星の未来を背負って戦った光の使徒たる英雄に敗れ、その魂はエーテルとなって天へ昇って行った。

そして物質界を離れたエーテルが辿り着く場所、時にエーテル界と呼ばれ、かつて冥界と呼ばれていたその場所に流れる川のほとりに、彼は立っていた。
「さて、これは一体何の未練が見せる幻なのか…」
死して物質界を離れた魂は生前の形を失い、エーテルの海へと還るものだと考えていた。しかしどういうわけか、遠く物質界を離れたその場所に彼は存在していた。手があり足があり、身にはアシエンのローブを纏っている。本来、存在している筈のない場所に自分がいることを悟り、彼はひとりごちた。
長い長い時を経て、ようやく、願いを託せる者に出会えたのだ。無責任に忘れ去られてしまった過去を伝え、そこに生きた者がいた、生きたいと願った者がいたということを、確かに伝えた。あのなりそこないどもは、能力では劣っている筈なのにとかく諦めが悪い。いつかはあの持ち前の強欲さで、私たちの神さえも排して世界を自分たちのものにしてしまうかもしれない。直接自分たちの手が届かなかったのは残念だが、そんな未来も、悪くはないのかもしれない。
自分を討ち果たした英雄に、覚えていろと言い残し、それでようやく還れると思ったのに。エーテル界に運ばれてなお、何故この魂は生前の姿形の中に囚われているのか。
いまだ解放してもらえないとはいったい何の呪いかとため息をついたその時、後ろから声をかけられた。
「やあやあお帰り、エメトセルク…いや、ハーデス」
明るい響きを伴った懐かしい声。かつて真なる世界で、ともに生きた友人だった男、ヒュトロダエウスだった。彼はゆっくりと近づいてきて、被っていた仮面を外して微笑んだ。
「ずっと、ずっとキミを待っていたよ」
懐かしさにエメトセルクの眼から涙が溢れた。会いたかった相手が、長い長い時間の中で傷つき心が迷うたび、誰よりも会って話したいと願った相手が今目の前にいる。どちらからともなく手を伸ばし、二人は強く抱きしめあった。もはや感じることなどないと思っていた肌の温もりが、互いの存在の確かさを知らせる胸の鼓動が、この上もないほど嬉しかった。

「…私たちはなぜここに?」
長い抱擁の後、エメトセルクは尋ねた。物質界を離れ魂からも解放される筈のエーテルがなぜ、形を為せるのか。冥界のエーテルを視ることができる彼にも、計り知れない現象だった。
「あの人からの伝言だよ」
フフッと独特の笑みを漏らしながらヒュトロダエウスが言った。
「英雄が神を討つまでにはまだ少しかかりそうだから、もう少し待っててくれってさ」
そう言いながらくるりと背を向け、遥か彼方に見える彼らの星を指差した。星の未来を選ぶのは願いを受けた彼らの神なのか、それとも人なのか、彼らの戦いはまだ終わってはいない。
「キミが来るまでもずいぶん長くかかったんだけどね。ワタシはずっと待ちぼうけだ。まったく、ひどい友人達だよ」
再びこちらを振り返ったヒュトロダエウスはそう言って笑った。
それから二人は、冥界の川のほとりを並んで歩いた。ヒュトロダエウスはここで、星の行く末を見守っているのだという。あの人が使命を終えてこちらへやってきたら、三人で一緒に還ろう、そういう約束をしたのだという。
つまり、今しばらくはこの、夢と現の間のような不思議な場所で、過ごす時間があるということだ。この川のほとりにはいくらかの命の名残が形を成していて、木々や草花や、小さな動物たちが活動していた。それは一体何のために?とエメトセルクは疑問を口にしたが、ヒュトロダエウスはさあ?と首をかしげながら、何も存在しなかったらきっと神様も寂しいんじゃないかなと悪戯っぽく笑った。

神様とはいったい誰のことだろう?
人の願いが作り出した神は、紛い物にすぎなかったけれど。
答えのない問いは今しばらく保留にして、これからの長い時を過ごす時間潰しにすればいい。

「ハーデス、キミ、変わったよね」
歩きながら、エメトセルクの顔を見つめてヒュトロダエウスが言った。仮面を外した彼の顔は、古代人であった頃の彼の顔とは少し違っていた。髪は大部分が漆黒の闇に染まり、額には古代人の時にはなかった新たな人としての形が刻まれている。彼は古代人であり、アシエンであり、ソル・ゾス・ガルヴァスという名の、ひとりの人間でもあった。
「当たり前だろう。どれだけの年月が過ぎたと思ってるんだ」
エメトセルクは少し憮然とした様子で、フンと鼻を鳴らす。
「知ってる。知ってるよ」
ムッとした顔はかつての時代とちっとも変わらない。ヒュトロダエウスは可笑しいのと嬉しいのとが混ざった感情でクスクスと笑った。
「いろんなものを見てきたからな。それこそうんざりするほどに・・・」
様々な思いがエメトセルクの脳裏を過る。いくつもの時代の、いくつもの人生をこの目で見てきた。世界の真実を知らず、刹那の時の中で抗い生きる愚かで哀れな生き物。
「だがそのおかげで、わかった事もある。なりそこないの芝居はいいぞ、私たちの時代にも芝居はあったが…そう、あれは作家だけが作るものではないのだ。どんな端役でも役者には役者の思いがあり、衣装や音響や照明のいたるところにそれぞれの思いが散りばめられている。混沌としていて駄作も多いがそれも含めて面白い。私たちの頃には、ほぼ作家のイデアだけで完成されていたから、統一性があって美しくはあったが、完全性を重んじるあまり、自由や多様性には乏しかったように思う。なりそこないの芝居は時には破綻していてもなお、それを凌駕するほど面白いものがある」
急に饒舌になったエメトセルクを見て、ヒュトロダエウスは楽しそうに笑った。
「フフフ…随分上手く喋るようになったんだね。キミが見てきた芝居の話や何かももっと聞かせてほしいな」
「ああ、時間があるなら、いくらでも話してやるさ」
口にした自分の言葉にエメトセルクはふと思案した。まだ終わりは見えないが、こうして与えられた時間にもいつか終わりが訪れるのだろう。
「そうだな…終わりがあることにも、意味があると思えるようになった」
どういうこと?とヒュトロダエウスが視線で聞いてくる。
「以前はただこの楽しい時間が終わらないようにと願ったものだが、どんなに素晴らしくとも長すぎる物語は次第に苦痛になっていく。幕が閉じられるからこそ、新しい幕が上がる。当たり前のことだが、その意味がようやくわかった気がする」
長いため息とともにその言葉を吐き出して、エメトセルクは少し寂しそうに笑った。
「永遠を手に入れたからこそ言えるセリフだね」
ヒュトロダエウスは彼の言葉を柔らかい笑みで受け止めて言った。
「永遠を手に入れたからこそ、失うものもある」
エメトセルクはそう言って、はるか彼方に見える彼らの星を見遣った。時が永遠であるが故に、諦めることができない。終わりにすることができない。

ゾディアークの意思などなくとも、世界統合を諦めることなどできなかった。取り戻さなくてはいけない。世界を。私たちの手に。その思いはどうあがいても消せるはずのない、本心からの彼の願いだった。

「あの子たちは、とても頑張っているよね。キミの言うとおり、弱くて脆い存在かもしれないけれど、強くて優しい心を持っている」
少し寂しげに星を見つめるエメトセルクの視線の先を追いながら、ヒュトロダエウスは言った。
「ああ。…あの子たち、か。お前はそんな風にあのなりそこないを見ているのか」
エメトセルクは視線を戻してヒュトロダエウスを振り返る。
「フフ…かわいい子どもたちだよ。健気でかわいい生き物。姿形は変わっても、同じ命と心を受け継ぐものたちだ。キミもそう思っているからこそ、愛したんだろう?」
問いかけられて、エメトセルクは気まずそうに視線を逸らした。
「よしてくれ。私は…」
言いかけて、言葉を探して少し逡巡した。ソルとしての記憶、そこで抱いた感情、彼自身の中に確かにあった認めたくはないその感情。愛すべきではないと分かっていた。だが関われば情がわいてしまう。

それは愛情なんかじゃない、無責任で身勝手な、孤独が生み出した感情。裏切ることになるとわかっていて愛するなんて、そんなものは愛情なんかじゃない。
 
エメトセルクは目を閉じて、脳裏に浮かぶ幾つもの面影を苦い感情とともに思い出していた。
「甘えていただけなのだろう…自分よりも弱くて、脆い存在に…」
長い躊躇いの後に見つけ出した言葉をようやく吐き出して、エメトセルクは自嘲気味に笑った。
「悔しいな、ワタシが見ていない間に、キミはそんな顔をするようになった。こんなことなら、エメトセルクになっておけばよかった。ワタシならきっと、生まれ変わったキミを真っ先に見つけ出して、その姿を楽しんだだろうに!」
ヒュトロダエウスはくすくすと笑いながらそう言った。何てことを言いだすんだとやや憤慨気味のエメトセルクに、左手を上げて違う違うと示しながら続けた。
「冗談だよ、でも、そうだね。今はもっと時間が欲しい。ワタシが見ていない間のキミを、もっと知りたいと思うよ」
穏やかに微笑みながら、ヒュトロダエウスはエメトセルクを見る。フッと口元に笑みを浮かべてエメトセルクは応えた。

「あの気ままな鉄砲玉が帰ってくるまでの間だ、時間潰しにいくらでも話をしてやるさ」

 
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ええ。まぁ色んな願望を込めまして。
こんなエピローグがあったら私の気持ちも落ち着くかなと。
友人だったのなら、エメトセルクはきっとヒュトロダエウスと話したかったと思うのですよ。それなのにどうして、余計な泡だなんて言ったのか。とてもとても会いたいけれど幻影の彼に会いたいわけではない、そのことがどれだけヒュトロダエウスが大切な友人だったかを物語っているような気がして、むちゃくちゃ切なかったんですよ。
| FF14 | 15:33 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark









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